通販という手があったとそれを端緒に思いつくが強力ミルミキサーを買うというのではなく、何かお祓いグッズみたいなものも探せばあるはずと考えたからで、その筋の専門といえば霊媒師なのだろうが高くつきそうだからそこまで踏み込むつもりは元よりないし、といって緊急を要することだから速攻且つ安価に入手できるものとしてそれは妥当な線だと早速仕事の合間に、というか仕事もせずにネットを徘徊し、魔除けの札とかご利益ありそうな数珠その他諸々のグッズを闇雲に購入するが、送料込みで総額四万八七〇〇円とそれなりに痛い出費で、それでも已むを得ぬ措置と目を瞑って品物の届くのを心待ちにし、その間もそれは二度ほど現れて相応に悩まされたから早く早くと焦れる思いで熱い眼差しを弥生は送るが、そのあらわな肢体をまさぐりつつどこにでも舌を這わせてゆく佐脇はいつになく愛撫に熱心で、そのあまりの熱の入れようにこれまでにない高みへと弥生は上り詰めてゆき、何がそこまで佐脇を駆り立てているのかと訝りながらも理性は脇に押しやられてしまって真面に推し量れず、自室へ招いたことをいくらか後悔しつつもさらなる高みを目指してセックスへとのめり込んでゆく。冷めやらぬ余韻に浸りながら佐脇のほうを窺い見ると仄暗いなかに浮かびあがるなかば影になったその面差しがどこか不穏さに被覆されているように感じられ、少しく不安の兆した弥生が身じろぐとそれを察したかして伺いを立てる眼差しを佐脇は向け、真正面から捉えたその顔にはしかし自身の従順さをアピールして已まない眼差しが見てとれるだけで不穏さなどどこにもなく、とりあえず不安は脇へ押しやるもその眼差しに眉を顰め、何か言葉を掛けられるのを回避するかに蒲団を払い除けるとその腹を跨ぎ越してトイレに立つが、考え詰めると恐くなりそうだからあまり深く考えることはなく、グッズが揃えば万事解決すると短絡しているわけではないが明日にも届くだろうそれらの素晴らしい効力を夢想しつつ眠りに就いた。
明け方不意に眼を醒ますが、寝つきは悪くても眠りそれ自体は深いからかそんな時間に眼を醒ますこと自体稀なことで、佐脇がいるからよく眠れなかったのだと寝返り打ちながらそっちへ視線を巡らせるとそこに佐脇の姿はなく、トイレにでも立ったのらしくそれで起きてしまったのだとちょっと苛立ち、再度眠りに就こうとまた壁際へ寝返り打つが寝ようと意識するせいか却って眠ることができず、というか佐脇の戻ってくる気配が一向にないのが気に掛かり、こんな早い時間に帰ったとも思えないが訝しげに首を巡らしてゆくと薄明に照らされた自室の静けさが身に沁み、明け方なんて大概そんなものだという認識はありながらやはり変で、そう思ううちにも足元のほうに何か蠢くものの気配があるのを察知し、つまり例のヤツのお出ましというわけだが、よりにもよってこんなときに来なくてもと非難したところで聞いてくれる手合いではなかろうし、下手に聞き入れられてしまったらその代償に何を要求されるか分からないとも思い、いや抑も斯かる交渉とは凡そ無縁なものだろうからそれが聞き入れられようと聞き入れられまいとそんなことには関係なく、いかなる意味においても断然こっちが不利なのは明らかだからただ消えるのをじっと待つしかなく、佐脇の姿の見えぬのが気に掛かるが斯かる場面に遭遇しなかっただけでも幸いというもので、いやそうではなく、むしろ佐脇の不在を狙ってやって来たのだと思い至り、なんて卑劣なヤツだと弥生は内心で罵倒を浴びせながらつけ入る隙を与えぬようずっとそっちへ険しい視線を向けていたが、何かいつもよりこぢんまりしていて全体弱々しげな印象で、そうやって自己の卑小さを演出して油断させる手だろうと一方で思いながらそろそろ朝になろうかという時刻で外からの光も徐々に増していることもあり、それで勢いがないのかもと見做し、これならすぐに消えてくれるかもしれないと少しく楽観する。そうした楽観が弥生を勇気づけて勢いその眼光も鋭さを増すが、それに較べて相手のほうは依然臆したように縮こまっているからそこに不安の色が見てとれなくもないとさらにも弥生は強気に出て、ここで一発かましておけば後あと有利にもなると半身を擡げると尚こぢんまり蠢くそれを真っ向から睨めつけてみるが、今ひとつ反応は薄く、というかほとんど応ずる気色(けしき)もなく、やはり睨んだくらいでどうにかなるものではないらしく、彼我の力の差を思い知るとともに然るべき処置によってしかそれには応接し得ないのだとなかば観念した弥生はグッズへの期待を過剰に募らせ、それが揃ったらお前なんかボッコだと心内で罵りながらそいつが消えてくれるのを待つのだった。それにしても佐脇はどこへ行ってしまったのか。ひとつ蒲団で寝ることを嫌ってリビングのほうで寝ているとも考えられるが今それを確かめることはできないからとりあえずそれは措くとして、足元に蠢くものを注視しつづける弥生の虚ろな視線が時折それから離れて自室を眺めやるのは現れたのがふたりではなくひとりだったからで、つまりこれまで一貫してそうであったところの縺れあいという側面が破られたわけだが、その真意は計り兼ねるものの片割れがどこか別のところに潜んでいるとそう弥生は考え、斯かる新局面に先の見通しのつかぬ不安を懐きつつ自室に視線を走らせるが気配もなく、足元にいるのは男のほうだったが片割れの女がここにいないとすればあるいは別室の佐脇の許へ行っているとも考えられ、まさかとは思いながらその可能性を否定できず、否定し得ぬかぎり今まさに起きていることとして考えざるを得ず、自身の危機のみならず佐脇の危機でもあると思うと佐脇を泊めたことが悔やまれ、どっちが誘ってどっちが応じたかはすでに失念してしまったが、弥生が誘ったにしろ佐脇が望んだにしろ成り行きでそうなったにしろいずれにしても自身の欲望をそこに認めた弥生は、万一佐脇をも巻き込むことになれば、いやすでに巻き込んでしまっているのだがその責めはすべて自分に帰すると自責の念に駆られ、こうなれば積極果敢に打って出るほかないと決意する。