友方=Hの垂れ流し ホーム

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もちろん虚構などではないのだがそこにそれがあれば自ずからそこへ向かわざるを得ないのではないだろうか抑もそうしたものとしてつまり何らかの危険を想定外のというよりは想定内のそれを事前に察知し回避するためにあるいは回避するために備える時間というか回避するための策を講じる時間というかそれとも潔く覚悟を決める時間だろうかそうした何某かの時間を稼がせる目的で設置されているのだろうし実際それがあるとないとでは回避の成否も違ってくるだろうしもちろん回避するとしてだがとにかく避けるべくもなく出会うほかなかったのはこちらが近づけばあちらも近づきこちらが遠離ればあちらも遠離るのだからつまりこちらが留まればあちらも留まるということでそれはもう法則と言ってもいいだろういずれにせよこれから向かおうとしているその先が死角となっているからにはそしてオレンジに縁取られた丸の中に当の死角が像が反転しているにせよ捉えられているとすればそれはもう見事な反転振りで一分の隙もないがそのかぎりに於いて死角は死角ではなくなるわけだからそこに注意が向けられてしまうのも当然の成りゆきでまあそのたびに辛気臭い面持ちと出会うことになるのだからどうにもやり切れないがどこにでも潜んでいるというか至るところに仕掛けられているそれは罠のようでもありそれから逃れることは至難の業であるからして暗くても遠くからでも視認できる縦に細長いオレンジの地に突き立てられたそれに刺戟せられた視覚は否応なしに死角を奪われるほかないがそれはそれで結構なことなのにどこか釈然としないのは像が反転しているからなのかそれとも他に理由があるのかあるとすればそれは何なのか尤もなものか理不尽なものかいずれにせよひとつのイメージを掲げることでまあ複数でも差し支えはなかろうがさしあたりひとつで充分だろうなぜといってこの身はひとつしかないというかそう見做すほかないのだからそうしてそこへ向かおうとする意志とともにもちろんそれは自らの意志であり全き意志であり自由な意志でありとにかくそうした意志に於いて今まさに坂を上っているのだということを反転した像のうちに見出すまでもなくあるべき姿をあるべきところへ過不足なくつまりは納まるべきところへ納まってそう言ってよければだが緩い勾配の坂道へと収斂してゆく中そこに自身を他の誰でもないこの私を見出すことは至極真っ当な配慮であるからしてかかる配慮のうちにこそこの坂道が現前することにもなるのだと言えば大仰にすぎるかもしれないが、抑もこちらが見なければ向こうも見返すことはないのだから端からそこへ目を向けなければいいだけのことでなぜといって他にいくらでも目を向けるところはあるのだから興趣をそそられるものであれそうでないのであれ路面にせよ建物にせよ植込みにせよ夜空にせよ穴にせよ襞にせよ見ることは可能なのだから至極簡単な話なのだが至極簡単だからといってそれが至極簡単にできるとはかぎらないというのは一見して至極簡単な事柄もその裏側には至極複雑な仕組みが至極複雑に絡み合っていて容易には解(ほど)き得ないということもあるし目の前の事象だけに囚われていると却って事の本質を見誤ってしまうということのそれが好例と言えるかどうかは分からないが裏側に潜む潜んでいるだろう何かがうっすらと透けて見えるような見えないようなそうしたもどかしさからつい目を離せなくなってしまうことにもなるわけで殊更事の本質を見極めようとしているわけではだからなく見極められるものなら見極めたいものだが今はそのときではないということでもちろんそれは疲れているからだがそれでも最後まで上りきれずに途中で力尽きてしまうことがないのはいくら疲れているといってもそこまで消耗しているわけではないし遅かれ早かれ坂道は終わりを告げるだろうしそれはもう絶対に確実だしそうして坂が尽きれば周囲から頭ひとつ飛びだしていて闇の中でも容易に見分けがつくだろう重厚なその建物はすぐそこでそれはもう本当にすぐそこでもちろん今はまだその途上にあってそこへ向かっているところなのだがつまり勾配は緩いが距離はそれなりにある曲がりくねったこの坂道をこの三年というもの上ったり下ったりを飽きもせずくり返してきたこの坂道を今の今上っているというまさにそうしたイメージを目の前にというか目の奥にというか場所の特定は困難だが頭の中のどこかに恐らく特定シナプスの活性化という形でだろう掲げているのだがそのイメージに即して言えば坂道の中間辺りに差し掛かったところだろうか息を切らしてというのではないがそれでいて背を丸め歩幅も短くひどく疲れ切った姿が浮かび上がってきて一日の労働はこれほどにも人を変貌させるものかと何がなしやり切れぬ思いに浸されてそれでも何も考えずに手足を動かしていれば案外早く着くのだがそれとも何か考えごとをしているほうが早く着くのだろうかいずれにせよ費やされた時間がいくらか圧縮されるか間引かれるかするからだろうもちろん記憶の内でだがところが改めてその距離を念頭に浮かべるとそこに至るまでの一歩一歩が微々たるものに思えてくるしその集積としての距離たるや実際以上に厖大なものになってそれは心的な疲労をさらにいっそう深めてしまうことにもなるだろうからそうした悪循環に陥らないためにも意識を他へ逸らすことが必須というかだから間違っても疲れたなどと口にしてはならずなぜといってそう口にすることによってというかそう思うだけでもそれに付帯する様々なイメージがもちろん特定シナプスの活性化という形でだろう喚起されて現実へ引き戻されてしまうからでこの際何が現実かは問わないとしてもとにかく視覚に強く訴えるオレンジに誘引されてしまうほかないしそこに見出される虚像もひとつの尺度として担保されてしまうことは避けられないしそれなら正面切ってその上を突き進むことがある種の潔さとして真実潔いか否かはべつとして認識されもしていずれにせよわざと踏みつけることがないのはそうする理由がないからだしそうかといって避けることもないのはもちろんそうする理由もないからだがそんなふうにして踏んだり踏まなかったりしながらそこをその生け垣の前を過ぎるとリング状の縁取りとそこから伸びるあるいはそこへと伸びる一筋のラインからなるそれがまたこちらにというかこちらを辛気臭い面持ちでつまり人の気配を感じてそちらのほうへ視線を向けると同じような視線が返ってくるというわけだがよく見知っているくせにまるで見も知らぬ他人のような眼差しをそれはしていてあるいは本当にそうなのかもしれないが暗鬱な電波を送って寄越す幾重にも引き裂かれたものとしてその空虚な眼差しに射抜かれると真空状態に置かれでもしたように息が詰まるというか呼吸を忘れるというかもちろん呼吸はしているしそれが止まることもないのだがさらには身体各部が痙攣あるいは硬直といったことになってそれは向こうも同断だろうがそうした状況に陥って互いにというか各個にというか考え込むように項垂れて何についてかは知らないがそれからこちらとあちらとに分かたれてゆくがこちらとあちらとに分かたれてそのあとしかしどうなるのか分裂したままどこかへ消えてしまうのか再びひとつになるものなのか消えるとしてそれはどこへ消えるのかひとつになるとしていったいそれは誰なのかというようなことを巡って際限もなく考えながらというか考えさせられながら誰にかは知らないが緩い勾配の坂道を上ってゆくが、せめてバイパスになるような階段でもあればいくらか楽になるのだがそうしたものもないからいやあるにはあるが通れないというか通るのが躊躇われるというか恐らく私有地なのだろう手入れもされていないらしく腰ほどもあるだろうか丈の高い草に覆われて伸び出たそれら草たちは太い茎から放射状にいくつもの葉を茂らせて隙間もなく林立しながら少しずつ押し上げたのだろう敷き詰められたブロックというか石組みというか歪んでいて水平を保っていないため足場も悪いし何より小便臭くて一度で懲りたのでそこを通って時間短縮を図ろうという気にはとてもなれずだから曲がりくねった坂道をこうして上ってゆかねばならないし辛気臭い面持ちと幾度も対面せねばならずいつものことと割り切ってしまえばいいようなものだがそう簡単に割り切れるものでもないから厄介でそれでもこの坂道を上ってゆくことが今為すべきことなのだからと為すべきことを坂を上るということを第一に考えてそろそろ中間辺りだろうからまだ残り半分を上らねばならないが少なくとも半分は上ってきたわけでもう半分と言うべきかまだ半分と言うべきかそれによって心的疲労の度合いにいくらかは身的疲労に於いても影響が現れるだろうことを思うと慎重にもなりそこはだから曖昧に濁しつつ今為すべきことを為すべきことだけをつまりこの坂道を上ってゆくということだけをというかむしろ機械的な動作に専念するように無心にというのではないにせよなぜといって心は絶えず何かを対象として捉えていてその何かについて応答するべつの何かがあるだろうからだしそうした連鎖的に活性化する作用を意志によって制御するのは並大抵のことではないだろうからでそうしたことに通暁しているならべつだが例えば僧侶とかとにかく今はこの坂道を他にゆくべき道はないとばかりにもちろんないのだがこの坂道より他にはないのだが上ってゆくほかなくそうして上ってきた坂道がほぼ直角に交差するべつの坂道に突き当たるところへ差し掛かりつまりそこで右と左とに分岐しているのだが右と左とが合流しているとも言えるわけでいずれにせよその地点から見ると右は上り坂だが左は下り坂でつまり三叉路というかT字路というか丁字路というかそのいずれの呼称が正しいのかは分からないが正確を期すならイ字路もしくはト字路とでも呼ぶほかないがさしあたり丁字路と呼ぶとしてその丁の亅(けつ)のほうからやって来て一を右へそこから傾斜が僅かにきつくなってきつくなったその分だけ距離も伸びてゆくようだが実際に伸びているのだと実感されることが稀ながらあって心的距離が物理的距離として現実化するその不可解に抗うように歩みを速めてもその距離を埋めることはできないらしくいずれにせよ静寂に包まれた郊外の住宅地に響く靴音とともにひとり黙々と歩く姿が見出されるそれは他の誰でもない甘利のものにほかならないがいったいどこからそれを見ているのか誰がそれを見ているのかということになると途端に糢糊としてもちろんそれも甘利にほかならないと押し切ることはできそうにないしたとえそれらすべてが悉く甘利だとしてもそう見做すことができるとしてもそれでも同じ甘利ではなくそれぞれべつの甘利に違いないとそう思い做されてしまうのは至るところにそれが現れてこちらを睨まえるからだがもちろんこちらが睨まえるからあちらも睨まえるわけでとはいえこちらが睨まえたその結果として睨まえ返すのではなくそれはいつも同時にでありそしてその同時にということが驚異なのだがいや驚異というか不可解というか全体それが誰なのか視線が合ったその瞬間に分からなくなるというか分かっているのに分からないというか分かっているということが分からないというかちょっとした混乱に陥っていやちょっとどころか途轍もない大混乱ということも世界の存立さえ危ぶまれるほどのもちろんすぐに収束して何ごともなかったようにその前を通りすぎるにせよその一瞬の錯綜の眩暈するような感覚は路面の傾斜なり像の歪みなりを実際以上に際立たせるらしい。

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