友方=Hの垂れ流し ホーム

戻る  

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

04

リズミカルなその動きに合わせて腰が揺れ、あるいは速くあるいはゆっくりと、安定しているようでいて不安定に揺らぎながら強く押しつけてくるのを受けたり交わしたり押し戻したり、一気に上り詰めるのではなく少しずつ嚙み締めるように、そのためには呼吸を合わせなければならないのだが、巧くいくこともあればいかないこともあり、互いに歩み寄るその歩み寄りが却って互いを遠ざけることにもなるらしく、いずれにせよ微細な振動は遍くゆき渡って急須を湯飲み茶碗を震わせるが布巾はそのかぎりではなく、それでも縁に沿って移動するうちにほつれた髪が頬に掛かるのを煩そうに搔き上げながら、肩胛骨の間を背骨の窪みが縦に貫いて、四つん這いになって尻を高く突きだし、肘をついていることもあれば腕をぴんと真っ直ぐに伸ばしていることも、さらに反対側にまで反り返っていることもあるが、背筋をすんなりと、撫肩して、白い脇を乳が覗いたというのではないが、身を捩るたびにゆらゆらと揺れる乳房の膨らみを僅かに覗かせながら、滴る汗を一筋二筋と煌めかせながら、それは朝なのか夜なのか、もちろん朝でもあり夜でもあっていずれか一方に収束することはないのであるからして常に目まぐるしく変化していると言ってよく、それなのに何ひとつ変わることなく同じものが同じものとしてありつづけ、丸みを帯びたそれは白い、白っぽい、所どころ仄かに赤く色づいて、開いたり閉じたりしながら移動しつづけて已まないが、忙しなく動き廻るというのではなく、少し動いては止まり、また少し動いては止まり、をくり返し、慎重というよりはどこか上の空な足取りで当てもなく彷徨いながら線に沿ってどこまでも、いや当てはあるのだろう、こちらにはなくてもあちらには、そのどこか虚ろな眼差しのうちに確固たる意志を、そんなものがあるとしての話だが、認めることはできないとしても。そうして線の内側を越え出ないように、それを越えたら、踏み越えてしまったら大変なことになる、そうならないように握る手が強く引き寄せるのだが、引き寄せられまいと抗うように身を捩り、振りほどこうと藻搔くうちに軸がぶれ、像が歪んで、程なく歪みは補正されるのだが、だから歪んでなどいないのだが、つまり真っ直ぐに整然と並んでいるのだが、列を成してどこまでも連なっているのだが、引っ切りなしに行き交う車輌の轟きはその振動とともに四囲を圧して、見渡すかぎり一様な、あり触れた、これと言って特徴のないことが特徴とも言える、狭苦しいそこに反響し、さらに反響しつづけて眠りを妨げるのを、妨げられながらも眠っているのを、首を横へ向けるというか捻るというかするとそれは現れるのだが、強引に割り込んでくるようでもあり、つまり前のほうで、というのは上のほうだが何かが軋んでいるらしく、散発的に生じるそれはゆっくりと移動しているようでもあるがそれぞれを線で結ぶことができないからだろう、常にも増して騒がしく、いずれにせよ何もないと言えば何もないが全部が揃っていると言えば全部が揃っているそこにあるというかいるというか、ほつれたのを撫でつけながら丸めた背をこちらへ向けて尻の肉を密着させているのを、扁平になったそこへ差し伸ばすが届きそうで届かない、すぐ目の前にあるのに。矩形のなかというか向こうというか、奥のほうに仕舞ってあって容易には取りだせないということか、もちろんいつでも取りだせるがいざ取りだそうとすると手間取るらしく、あると思ったところにないということに、だから片っ端から開けて廻ることにもなって、なかには鍵が掛かっているのか錆びついているのか開かないのもあるにはあるが、そのうち流れ作業的な、機械的な反復になって何を捜していたのか忘れる、それでも捜しつづけるほかになく、なぜといって何もすることがないからで、つまり全部を終えてしまったからで、まあそれは言いすぎとしてもほとんど終わっていることはたしかで、とはいえ如何なる意味で終わっているのか、終わるとは何が終わるのか、翻せば何もはじまっていないということでもあり、捜しだしたからといって何かがはじまるものでもないだろう、それでいて何かがはじまるのを、はじまるかもしれないのを、その是非は問わないとしても、黒い小箱を翳しながら、指の腹で探りながら、なだらかな曲面を脹ら脛から踝を経て踵へ、そうして足裏の白さを、ほとんど隠されているそれがその瞬間不意に露わになるのを、尻の下敷きになって押し潰されたように拉げているのを、粉を噴いたようにも見える硬い角質層のざらざらした感触は思いのほか心地よく、ずっとそうしていたいがそういうわけにもいかないと引き離すと踝から脹ら脛を経てひかがみへ、そこからさらに上へ這い進んでゆくと尻の肉に、右のであれ左のであれどこをどう通っても必ずそこへ至るのであるからして避けて通ることはできないらしく、彎曲した面の膨らみと窪みを前にして、容易に押し拡げることのできる、柔らかい、画面一杯に映しだされたそれを前にして、目を細め、慎重に距離を測り、そうすることで越えるというか跨ぐというか、決して越えることのできないその間を、隔たりを、黒い小箱を翳しながら。

つまりこのところずっと曇っているというか翳っているというか、あらゆるものが遮断されて滞っているらしく、滞りながらそれでも流れてはいるようで、真っ直ぐにあるいは蛇行しながら、緩やかな流れは弓なりに彎曲していて、彎曲部の内側には土砂が堆積し、草が生い茂り、そのため幅は極端に狭くなっているが、水量が少なく底までよく見えるのを、手摺りの上で組んだ腕はやはり左が下で右が上だが、そこに胸を押しつけて流れに耳を傾ける姿が、こちら側に、それからあちら側に、そして少し先のほうにも、つまりどこにでも見出すことができるのであり、同じ姿を、同じ姿として、真っ白な蓑を纏って、縦に長い、折れてしまいそうなほどにも華奢な脚で、紫の一本(ひともと)ならねど、濡れつつ洗髪で立って居たというのではないが、黒々した瀬に面しながら微動だにせず岩の上に、それだけにいっそう白さが際立って遠目にもよく分かり、颯と瀬の早い谷川が、之に当って両(ふたつ)に岐(わか)れて、凡そ四丈(よじょう)ばかりの瀧になって哄(どっ)と落ちてというのではないが、何時間も流れを遮るように置かれたそこから狙っているらしく、尤も通りすがりに覗いただけだからほんの一瞬のことにすぎないのだが、垂れ下がる枝葉の間から透けて見える姿はその間ずっと不動の姿勢を崩さず、見られていることに気づいているのかいないのか柵に凭れて微風に髪を靡かせながら、浅いながらもうねり渦を巻き、白く泡立っているのを、揺れ動いて已まない流れを、途切れることのない瀬音を、日差しの反射を。眩しいからだろう、少しく目を細めながら窺うが右からも左からもやってくるそれらはあまりに速すぎて捉えられず、それでも揃って同じ方向へ向かっていることは分かり、周囲よりいくらか低くなっているから水が流れてくる、同様に落ち葉やゴミも流れてくるその手前、僅かに段差のある段の縁のところに並んで立っているが何を待っているのか、いや待ってなどいないのだが、再び歩きだすまでの束の間の停止というか休止というか、すぐに休止は休止となって移動が彷徨がはじまることに、つまり流れが堰き止められるのであり、そうすることでべつの流れが生じるのだが時間はかぎられているからゆっくりもしていられないのだろう、目まぐるしく動いて已まない視線は対象を正確に捉えているようで何も捉えてはいないらしく、なぜといって何ひとつ残っていないのだから、残っているとしてもひどく曖昧な、茫としたものにすぎない、例えば曇り空の滲んだような斑模様の厚い層になっているところと薄く霞んでいるところの色合いの微妙な違いとか、四囲の喧騒に混じる語の切れ端の、意味が生じる前に搔き消えてしまう、甲高い、不快というのではないにせよどこか暴力的な響きとか、何と特定することはできないが常に聞こえているのだろう、払い除けることのできないノイズめく音とか、風向きによって掠めたり掠めなかったりするにせよ移動する物体から吐きだされる甘苦い匂いとか、何かそういったものでしかなく、要するに握る手に力が込められると握られる手は上へ引っ張られて肘が伸び、限界まで伸び切ってようやく一歩を踏みだすのだが、差し上げた腕は先端で繫がっていて切り離すことができないというようにそのまま引き摺られるようにして横切るというか越えるというか、後ろへ後ろへと追いやりながら、背後でそれは折り重なってくしゃくしゃになっているに違いないが、そうすることで押しだされて推進力を得ることができ、前へと進んでゆけるらしく、蹴り上げる足にも力が入るのを、水を搔くように搔き分け進んでゆくと波紋が拡がって像を歪ませるのを。いずれにせよ午後になって降りだしたのかあるいはもっと前から降っているのか、小庭を濡らす音に閉ざされていっそう影の深まったことでそれを知るというか知らされるというか、重い体がさらに重くなるのを、それでいて重さはなく、かといって軽いのでもない、重さなき重さとでも言えばいいのか、とにかく首を擡げ、肘を張り、半身を捻りながら傾けて窺うが庇に遮られてそれは見えず、さらに前のめりになって見上げると向かいの建物と庇との間に僅かな隙間ができ、右上がりの細長い傾斜の際から白い点というか筋状のものが現れたり消えたりしているらしいのを、つまり縦に長い線が垂直かそれに近い角度で上から下へ移動しているのを、あるいは下から上へ移動しているようでもあるが、やはり上から下へ移動しているのだろう、かかる運動を漫然と眺めながら温(ぬる)い茶を啜るのを、両手で包み込むようにして掌を温めながら飲み口の辺りを指でなぞるのを、派手なネクタイが現れたり消えたりするのを、声を荒げて憤った素振りを見せるのを、下卑た笑いを笑うのを、黒い小箱を翳すと全部が消えてなくなるのを、それでもなくなりはしないのを、なぜといってなくなったらなくなった分だけ補充されるのだから、多くもなく少なくもなくいつでも一定量だけそれはあるのだから、そうすることで保たれているというか繫ぎ止めているというか、何をどこへなのかは知らないが。半身を捻り、今一度窺い見ると風が出てきたのだろう、室内へも吹き込んでくるらしく、手を伸ばしても届かないから立ってそこまで行かなければならないが、それが億劫なのか尚しばらくぼんやりと眺めていて、それでも湯飲み茶碗を少しずつ急須のほうへ押しやって、少しく開(ひら)けた空間に両掌をつくと尻を浮かし、また下ろし、それによって生じる対流の齎す涼気に息をつきながら同じ対流によって齎される埃に喉奥を刺激されて息を乱しもして、遠離り消え掛かるのを手繰り寄せながらまずは乱れを整えて、それから向き直り、少しく傾けながら横のほうへ位置をずらし、さらに伸ばしていた両の脚を曲げて引き寄せ、踵を尻へ押しつけるようにぴったりと重ね合わせ、横坐りの体勢から前傾すると黒い房が垂れ掛かって半分ほど覆い隠してしまうが、立ち上がって前方を見据えると再び露わになって、黒髪かけて、襟かけて、月の雫がかかったような、裾は捌けず、しっとりと爪尖き軽(かろ)くというのではないが、それを遮断すべく卓を離れ、というか今まさに離れようと身を翻して滑るように斜め前方へ、といって二歩か三歩にすぎないが、二歩にせよ三歩にせよ道のりは果てしなく、そこへと至ることは決してできない。

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

戻る 上へ  


コピーライト