友方=Hの垂れ流し ホーム

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要するに経路など意味を成さないし途中などというものはなく、その間(あいだ)はないのであり、欠落というか欠損というか、最初から奪われていて、それでもその穴を埋めるというか塞ぐというか、一筋の線のように途切れることなくどこまでも連なるものとしてそれはあるとそう思っている節があり、だから切れ切れの断片を無理やり繋ぎ合わせてでも辻褄を合わせようとするのだし、幾重にも折り重なった襞を一枚一枚丁寧に捲ってゆくのだし、それはもう気の遠くなるような作業と言ってよく、弛みない努力の果てに成し遂げられるものだろうがそれをこそ成し遂げなければならないと頑なになりすぎても迷うというか彷徨うというか、いずれにせよ汗ばんだ皮膚に貼りついて突っ張るような、何かそんなふうな違和感が、とそう意識した途端に一気にそれは拡がって、四囲を閉ざされ隙間なく埋め尽されてもう、それでもどうにかして動かすというか動かそうとしてみる、幾度も試みた試みをまた試みる、幾度試みても挫折する試みをまた、今度こそはと執拗に、そんなことできはしないのにもう、諦めが悪いというか前向きというか、どちらが前なのか後ろなのか分かりもしないのにもう、それでも滴り流れる一筋さえあればそれを辿ってゆけるはず、そうして遡行してきたのだからと滴り流れるのを、流れ落ちるのを、どこまでも、尤も隙間から漂い流れてくる風に流されてそれはこちらからあちらへ、ほんの一瞬だけ香ってすぐに搔き消えるその一瞬を捉えて、その一瞬のうちに全部が、微妙な均衡で保たれていたその均衡が破れて崩れるというか壊れるというか、雪崩のように押し寄せてくるに違いなく、そうなればもう受け止め切れるものではないからそうなる前に少しずつ要るものと要らないものとを仕分けることが、ひとつひとつ手に取り眺めてよく吟味することが、とはいえ何が必要で何が不要なのだか、というか不要なものなどひとつもないのではないか、さしあたり必要ではないとしてもいつか必要になるときが、手に取り眺めているうちにそんな思いの兆すのを、近づきすぎること眺めすぎることは却ってものを見えにくくするということか、そうとすればいかにして仕分ければいいのか、中立公正であることは無理としてもせめてかくあろうとすること、目を瞑るのではなく見開いてあること、そんなふうにして具にというか隈なくというか、それでいて近づきすぎることなく眺めすぎることなく、頁を捲るように折り畳まれた襞を開いてゆき、貼りついて剥がれないそれを慎重に、何ひとつ、それこそ一点の染みも汚れも見逃すまいと、なぜといってほんの僅かに穴があるとしてそのほんの僅かな穴でもそれを見落とせばそこから流れだしてゆくことになるだろうからで、全部が、余すところなく、とはいえ見えない穴を見つけることができるだろうか、念じて見えるようになるわけでもなかろうし、それどころかありもしない穴をいつまでも探しつづけることに、いや穴はある、見えないだけで至るところ穴だらけに違いなく、だから見つけ次第塞いでゆくつもりで研ぎ澄ますのだが見えないから見つからないし凝らしても眇めても見えるようにはならないのであり、それでも尚見ようとして窄めたり見開いたりするうちに乾燥しているからだろう、中断を余儀なくされることに、もちろん休息を挟んで再開されるのだが、例えばボタンを押すと中断していたところからまた再生されるとか栞を挟んでいた当該頁から再び読みはじめるとか、そんなふうに都合よくできてはいないから思いもよらない頁が開かれることもしばしばで、その操作性の悪さに気を揉むが馴れてくれば気にはならないし、見えてくるものを見るよりほかないのだから見えてくるものを見るというわけで、そこへ焦点を合わせてゆくと揺らいでいたのが凪いでくる、滲んでいたのが鮮明になってくる、そうして仄白く艶やかなそれがいっそう艶やかに仄白く、射るというか刺すというか、強く刺戟して已まないのを、弾けそうなほどに張り詰めたその膨らみが今にもこちらに迫ってくるのを、ぴったりと閉じられて隙間もないそれが今まさに開かれようとしているのを、つまりこれ以上ないというくらい密着していたのが離れ離れに、というのは脹ら脛と腿裏とだが、次いで膝が伸びて折れ曲がったくの字から真っ直ぐな線となり、丸く飛び出た恰好の膝部分が同様に丸く窪んだひかがみ部分とともに線の真ん中辺りで上と下とを、腿と臑とを番いながら支えていて、いつでもそれはそこにあって腿と臑との間を取り持つというか執り成すというか、危うい均衡で保たれているらしく、なぜといってそれが正常に機能しなければ真面に立っていることさえできないからで、こうして横たわり腰掛けているほかないのもそのせいだろうか、恐らくそうに違いない。

そうすとれば膝はどこに、それは今も機能しているのか、手を伸ばしてもそこにそれはなく、徒らに空を切るばかりで何の手応えもないのは修理に出したからだろうか、今頃は寄って集って分解検査に当たっているところだろうか、もちろんスペシャリストによって、あるいはもう使いものにならないからと新機種の導入を、馬力も性能も格段に向上して軽くて丈夫な、それだけ負担も少ない、目論んでいるということも、もちろんスペシャリストによって、仮にそうだとして長年使い込んで愛着もあるからそう簡単に諾(うべな)えるものではないがそれよりほかに手がないとすれば観念するほかなく、使ってみれば案外快適かもしれないし、それでも肌に馴染むまではいくらか掛かるだろう、いつまでも肌に合わないとすればべつのに交換してもらうことは可能だろうか、尤も保証期間を過ぎてしまえばそれも叶わないだろうが、そうしたリスクを鑑みれば容易に屈するわけにもいかないのであり、尤もまだそうと決まったわけではないし何も決まらないうちから勝手に忖度してもはじまらないが、向こうの都合だけで全部が決められて何ひとつ口を挟むこともできずに事が進んでゆくのは納得できないし、そこに何か不都合があると勘繰ってしまうことにもなり、そんなことはないと向こうは主張するだろうし、何か非があるとしてもこちらにであってあちらにではないということを言外に匂わせながら眩ますというか斥けるというか、すべては虚しい抵抗にすぎないのだから観念して大人しく従うほうが身のためだし安上がりでもある、とそう思わせる組織力には、説得力ではなく、とても太刀打ちできないと言ってよく、とにかく何ひとつ知らされないから不信が募るので、あるいは全部済んでから教えられることになるのか、そういう手続きになっているのだったか、そうしたことも含めて事前に書面で確認しているとすればすでに諒解済みということになるが、誰が確認したのか、あるいは確認したことになっているのか、そうした書面は総じて分厚く細かい文字で綴られているものだろう、もちろん読むことをためらわせる戦略に違いないのだからよく読みもせずに署名してしまったということも、それとも一切が不明のまま放逐されるのか、何となく後者のような気がしてならないのは青黒さに囲繞されつつあるからだろう、徐々に勢力を増しながらひたひたとそれはこちらのほうへ、何もかもを鈍らせ狂わせるそれは重く伸し掛かって動きを封じようとするが、そうはさせまいと抗うように藻搔きながら、藻搔いてどうなるものでもないが、それでも藻搔きながら雫が滴り落ちるのを、一筋また一筋と青黒い染みとなって地を汚(よご)すのを、照りつける日に乾いても尚次々と落ちながら黒く染め抜こうとして已まないそれが滴るのを、腕を擡げて拭うこともできずに力なく垂れ下がらせたまま眼差しはそこへ、今にも動きだしそうな気配を見せながら微動もしないそこへ注がれてもう幾日も、もちろん動かないといってもほんの僅かな揺れはあって息をするたびに胸や肩やが上下しているしそれにつれ布地も襞を寄せながら震えるように蠢くしほつれた髪が頬の辺りを揺らめいてもいて、つまり静止しながら揺れ動いているその姿を、それだけを見ようとして直向きな、それだけに暑苦しくもあるだろう眼差しを、それを受けながら尚しばらく背は動かずにいるが、そのせいか余計目が離せなくなって徐々に前のめりになるのを、それを知ってか知らずか、いや知っているに違いなく、なぜといって引きつけるだけ引きつけておいて裏切ることなど珍しくもないからで、それでも尚引きつけられてしまうのを、その姿が少しずつ大きくなってゆくのを、いつか視野の全部を覆い尽してさらにその外へも拡がってゆくらしいのを、その全体を捉えることはとても難しく、だから見えている部分だけを見るというか少なくとも見えている部分だけは見ることができるからその見えている部分だけを見ようとしてさらにも前のめりに、つまり部分を全体として、部分が全体となるわけだが、かかる注視をつづけるうちにまたさらに前のめりになってそれ以上前にのめるとバランスを崩す際の際まで、それでもその一線を越えることはなく、だから倒れることもなくさらなる注視をつづけることが、そしたらついに足裏が地面から、期待通りにか期待に反してかそれが踏み締めていた当のものから離れ、もちろん両方ではなく片方だけだが、つまりもう片方でしっかりと踏み締めながら全体重を支えているから倒れることなくそれは宙に浮いたまま前のほうへ伸びてゆき、そうしてその上へ重ね置かれて体重を掛けるというか重心を移すというか、倒れ掛かって斜めに傾ぎながら、刻々とそのときは迫ってくるから確実にそれは成し遂げられるだろう、そしたら雫のような形をした、貝殻のような形をした、他にもぎざぎざした形や花のような形やとぐろを巻いたような形もあるが、途轍もなく甘いというかただ甘いだけのメレンゲ菓子を奥歯で噛み砕くときのそれに似た乾いた音が、次いで口に含んだときの濃厚な甘さがほんの一瞬舌の上に拡がり、もちろん甘くないが全然甘くはないが、その甘くない唾を飲み込みながら靴裏と地面との間が少しずつ近づき狭まって今にも接するほどなのを、そこに影が落ちて刻々と増してゆく黒さのなかでついにメレンゲ菓子が砕けるような音がするのを、庭の至るところ道端の至るところにいくらでも転がっているそれはどこにでもいるあり触れたものに違いなく、尤もこの季節にかぎってのことだが、なぜといって季節が過ぎると姿を見せなくなるのだから、まるで示し合わせでもしたように、というか事前に示し合わせているのに違いないが、尤もそれが事実だという証拠はどこにもないが、それでもそうに違いなく、でなければある日突然現れて散々騒ぎまくったあと唐突に消え去るなどということが巧みな連携によらずにどうしてできるのか、いずれにせよそんなものに注意を払う者はいないらしく、ほかにもっとすることがあるからだろう、とにかくしたい放題のやりたい放題のかぎりを尽し、まあそれは言いすぎとしても思いついたことはためらうことなくすぐさま実行に移されるというわけで、なぜといって意見を具申したり異議を申し立てたりより魅力的な計画を提示したり、さらには同行を拒否したり当該行為の挙行を阻止したりといったことはとてもできないからで、そうして実行に移されるのであり、ほら見て、と声が掛かることもあれば何の合図もなくいきなりのこともあるが、合図なしは事前に心構えができないからダメージも大きく、もちろん合図があってもダメージを受けることに変わりはない。

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