友方=Hの垂れ流し ホーム

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まあそれは措くとしてどうにかこうにか段を上がるとすでに先客がいていくらか窮屈なその中を物色しながら奥へと進んで納まるところへ納まって混雑の具合で異なるが場合によってはどこにも納まれないこともありそんなときは空くまで待つかほないがそうしてどこへか運ばれてゆくのを揺れながら待つのであるからして箱の中は小刻みに揺れているというか箱それ自体が振動しているというかつまり全部が揺れているわけで速度を上げたり速度を落としたり停止するかと思うと動きだし動きだしたかと思うとまた停止してめまぐるしく変化して已まずつまりそうした変化の内に継起してゆくのだがそのような継起の内にあって継起するものというのは前から後ろへ流れてゆくあるいは近づいては遠離ってゆくあらゆるものつまり止まっているのも動いているのも等しく流れてゆく様々なもの対象と言ってもいい何かそうしたもののことだがそうしたひとつひとつを悉く目に留めることはできないにせよ大雑把にぐるりを眺め廻すことならできるだろうと視線を走らせるが風が入り込むのかすうすうして落ち着かずだから目にするもの耳にするもの感覚されるもの即ち五感で感じることに於いて注意力が散漫になって事態の把握が状況の把握が著しくというほどではないにせよそれなりに低下するわけでそれでも何食わぬ顔で揺られながら運ばれてゆくのでありそれがマナーというかルールというか否応なしに従わざるを得ない暗黙の法なのでありいずれにせよ決められた場所で停止すると進行方向向かって左側の中央付近にある扉が乗るときのものとはまたべつの扉が開かれるのは誰かがボタンを押すからだがつまり合図を知らせるボタンが至るところに設置されていてそのうちのひとつが押されるからだがつまり誰かが降車することをそれは意味するわけでもちろん押した当人にだけ降車する権限が与えられるというのではなくたとえ押していなくてもそこにいる誰もが降車する権利を有するのでありつまり降車する人のうち代表ひとりが押すというか最初に押したひとりが押した当人となるのでありそしたらベルというかブザーというかチャイムというか最初は高音のつづいていくらか低音のふたつの音が高らかに鳴り響いて赤々と点灯するのだが押した当のボタンのみならず押されていないボタンまでもが点灯しつまりすべてのボタンが赤々と点灯するのだがたったひとつのボタンが押されただけなのにすべてのボタンが赤々と点灯するその仰々しさというかどことなく威圧的な感じは押すことを躊躇わせもしてそうかといって押さなければ停車しないし停車しなければ扉は開かれないし扉が開かれなければ降りられないので押さないわけにはいかずだから押すのだが自分が押さなくても誰かが押すだろうというような他人任せの考えではいつまでも降車できないというのではないにせよ事実こちらが押す前に誰かに押されて赤々と点灯することも稀ではないのだからつまりぎりぎりまで待つという手もないわけではないが誰も押さないことも当然考えられるしそうなることはできれば回避したいから降りたいところで降りるにはやはり押さねばならず手垢に塗れたボタンを押してその意を示さねばならずだから押すのだが下のほうがすうすうして落ち着かないこともあってそのタイミングが掴めないというかどのタイミングであれ巧くいかないとそう思っていた節がありそれでも押さねばならないのでありだから押すのだがというか押したのだがそれとも押さなかったのだろうか思いきり手を伸ばしただけでは届かないだろうボタンが押されて赤く点灯することはなかったのだろうかチャイムというかブザーというかベルというか最初は高く次に低くその場にいる全員に聞こえるように鳴ることはなかったのだろうか、もちろんそんなことはないはずだがつまりボタンは押されたということだがその前にというのはボタンが押される前にだがどの辺りなのかを知ることがさしあたり必要というか場所を特定できればどれほどの時間的猶予があるのかある程度は知ることができるのでありというのも降りたいところを通過してしまったらいくらボタンを押したところで引き返してはくれないからでそんなわけで視線を巡らせて四囲を眺めやるのだが少しく上から見下ろすようにというのは地面からの距離がそれなりにあって道行く人たちの頭頂が覗けるほどにも高いところに位置しているからだが目線の位置がほんの少し異なるというただそれだけのことで世界が劇的に違って見えるわけではないにせよ何がなし目を惹くものがあるらしくそれまで見えなかったものが見えてくるような隠されていたものが露わになるようなそんな気がするから不思議でもちろんそんな気がするだけで見えなかったものが見えてきたり隠されていたものが露わになったりすることはないのだがとにかく視線を巡らせて目の前を流れゆくものたちと記憶の内にある映像とを照らし合わせるのだが焼き増しした二枚の写真がぴったりと重なり合うようにそれが重なり合うことは決してなくそれなのに同じ場所であることが分かるのはなぜなのかそれはもう三年もの月日を行ったり来たりしているのだから想起されるものと現に目の当たりにしているものとがたとえぴったりと重なり合わなくてもつまり全的な一致に至らなくても断片的に一致するだけでもそれがそれであることが分かるのでありだから四囲を闇に閉ざされていてほとんど見分けることができないとしても迷うことはないのであって迷ったと思う瞬間はあるにせよすぐにも晴れるというか晴れ間が覗いて既知の場所であることを示す物的証拠がそこかしこに見られるのであるからしてそうした瞬間瞬間の疑念は継起する時間の中に埋もれてゆきだから全体としては既知であるとそう見做すことができるのだがかかる疑念それ自体は埋もれただけで消えてなくなるわけではないからいつまた浮かび上がってきても不思議ではなくというかいつでも浮かび上がってこられるよう待機しているというか底のほうで燻りつづけているに違いなくつまりそうした知覚にせよ認識にせよ間違っている可能性は常に残るのだがそれでも既知であることの証左を手にしてしまえば当面はそれを担保に歩いてゆけるし歩いてゆくのだが辛気臭い面持ちに睨まえられるそのたびに担保されていたはずのものがどこへか散失してしまうようなそんなもの最初からないのだというようなそうした思いに囚われていくらか斜めに傾いでいる細長いオレンジの竿というか棒というかその脇をすり抜けるように早足でやり過ごすほかなくそうして振り返らずに前を見て前だけを見据えてぴちゃぴちゃと艶めく響きの中を搔き分けてゆくのはもちろん甘利にほかならず間歇的に揺らいで已まないその上を慎重な足の運びで上ってゆくのは甘利なのでありこれだけは何度確認しても確認しすぎるということはなく甘利は甘利であるということほかの誰でもないこの甘利なのだということ誰が何と言おうとそうなのだということをいったいこれまでどれほどくり返してきたのだったかそしていったいこれからどれほどくり返してゆくのだろうかそれは分からないがそれでも甘利は甘利なのでありそれを否定することはできないのであり、いずれにせよここまでの道のりを顧みて丁字路というか逆ト字路というかそれはおそらくもう見えないだろういやそう短絡もできないが十中八九見えないだろうもし振り返ってまだそれが見えるとしたらその落胆は計り知れないからもう振り返ることはないと腹を決めて前を見て前だけを見てもちろん少しは横のほうへも目を向けるだろうがほとんどは前を向いて緩いというかいくらかきつくなった勾配の坂道をぴちゃぴちゃと靴音が響くのを訝りながらあるいはうねうねと波打ち揺らぐのを訝りながら上ってゆくのでありそうすればいつか坂は坂ではなくなってつまり道は平坦になって揺るぎない存在感で屹立している巨大な箱の前へと至るに違いなく警戒というほどではないにせよ四囲へ気を配りつつどこへ向かってゆくのであれ揺れ動く中で姿勢を保ちながらというか右に左に揺れながらさらには前にも後ろにも揺れながらもちろん箱それ自体が揺れているのであるからしてその余波を受けて揺られているのだがつまり内なる揺れと外なる揺れとの異なるふたつの揺れ動きによって揺れ動いているのでありもちろん踏ん張ったり強張らせたりして一定の範囲に姿勢を保ってはいるにせよそれを止めることはできないのでありそうである以上ある程度は揺れるに任せるほかにないというか揺れ動く中で揺れ動きながら揺れ動いていることを忘れるというかそれが意識の領野から遠離ってゆくことにさえ気づかずにいるというか気づくことができないのでありなぜといってすでに意識はべつのものへ関心を向けているというかべつのものが関心の的としてそこへつまり意識の領野へ現れてくるからでそうして現れてくるものを見るというか現れてくるものしか見ないというかつまり内腿を撫で廻す皺寄った掌は冷たく乾燥していてこちらの熱を奪ってゆくうちにいつか冷たいとは感じなくなるが乾燥していることに変わりはなくそれに対してこちらは汗ばむほどにも湿りを帯びて熱を奪われても冷えるどころかさらにいっそう熱くなるらしくそのせいか呼吸も乱れて脈も早くなりそれに勢いを得てということだろう皺寄った掌はさらにも奥へ入り込んで全部を露わにしようとするらしくその巧みな手捌きというか筆捌きというかそれはもう年季が入っていて抗いがたく無抵抗というのではもちろんないが身を捩ったり強張らせたりというような身振りは形骸化したなかば形だけのものになってそれ自体互いに寄与するものとなるのでありつまりある種共犯的な関係へと否応なしに引き込まれるのでありとはいえそうした関係に於いて意志というものは如何に作用するものなのか自立的にであるのか他律的にであるのかそれは分からないが自立的にであるにせよ他律的にであるにせよ自らの意志であることには違いなくそれともそうしたものは最早自らの意志と見做すことはできないのだろうか何某か不純物の混じった濁った液体のようにどこか不透明で全き透明性なり全き純粋性なりに欠けるそのすべてに於いて責任を負えない不純なものなのだろうかまあすべてをひとりで引き受けることなどできるものではないだろうがとにかく粘り強い説得に根負けするように屈してしまうらしくそれからは行けるところまで行くつもりで突き進むというのではないにせよ意に添うというか身を任せるというかしながら上り詰めてゆくことになるのだろう。

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