友方=Hの垂れ流し ホーム

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そのメシアというのは「どんな方なんですか?」と今までそのような神秘めいた話に少なからず懐疑していたから大セミナーへの誘いも断わっていたが、このようにマリアを知ってしまうとそれへの興味が一挙に高まって「何でも噂じゃ玩具みたいだってことですけど」できれば自分も見てみたい話もしてみたいと田尻は言い、恵美=マリア視認で抜きんでられたことを挽回するつもりか知恵美を間近に実見している友梨が「そりゃもうスゴいんだから」と事細かに解説し、その霊妙な肢体から発する淡いながらも強烈な白とも黄ともつかぬ輝きの美しさ神々しさは喩えることもできずただただ感涙に噎ぶ他ないとまで友梨は言い、紀子にそれはかなり誇張した表現に思えたからその都度訂正するが、その存在の巨大さに触れて余計拝みたくなったらしく「ご一緒じゃないんですか?」と訊かれ、まずい展開になってきたと内心危惧しつつ「陛下は今ちょっと具合悪くて」と胡麻化して今日はメシアではなくてマリアの披露に来たのだからと言えば「あっすいません、マリア様前にしてメシアメシアって」とその非礼を田尻は詫び、愛想好く「あ全然構わないです」と半透明の恵美の霊が答えると頭を掻きつつ照れたように笑む田尻に「何笑ってんの」と傍目にも明らかな嫉視で真希は一睨みするとその膝を軽く叩き、そんなことより優れた霊感があるならあるで今まで一言もそれを言わなかったのはなぜかと詰め寄り、困惑したように「怖がるかと思ったから」と田尻は言い、「それだけ?」と呆れたように言う真希に「だって半端じゃないから」と呟くように答える田尻のその言葉にはそれ以上の問いを受けつけぬ妙な実感が籠っていて、初っ端に極めて程度の低い嬌態に接していたこともあって相当その人格を低く評価していた紀子だが、聞けば已むに已まれぬ自衛策らしいからいくらかは訂正し、興味本位に「それでそれで」と性急な友梨真希とともに紀子自身はしかし控えめに、予定の時間を遙かに超過してその話に聞き入ってしまったのだった。

霊と確かに言い得るものを田尻が最初に見たのは確か五歳のとき田舎の母の実家の仏間で、それ以前に見ていた可能性がないとは言えぬが確かな記憶にはないからこの五歳のときを最初と田尻は見做していて、その最初の記憶にしてもしかし言うほど明瞭ではなくて仏壇に線香をあげる母の後ろに控えさせられていたが子供の常でじっとしてられず立とうとしたのを気配に気づいて上げ掛けた腰を下ろし、首を巡らして四囲を窺えばその仏間の右手隅に陰気臭い年寄りが正座しているのをあれは誰かと母に訊き、「誰って、誰もいないわよ」ふざけないでと叱られたというのがそれで、記憶に明瞭なのはその陰気臭い年寄りよりもむしろ母の叱責とそれに続く平手の軽い打撃のほうで、だから多分にのちの再構成と思えぬでもないとそれは田尻も認めていてその見解は概ね妥当なものと紀子も思うが、祖父の父らしいとずっとあとになって知るその陰気臭い年寄りは帰郷のたび眼にしたからそれが傍証になると言い、身内だったせいか恐怖心はなかったがいつ見ても同じ場所に同じ姿勢で正座しているのが不思議で、虫でも観察するみたいに一日その仏間に居座って「優ちゃんご飯だよ、さっきから何回も呼んでんのに何してんのそんなとこで」と母に言われるまでじっと眺めていたのを覚えているが、それでもほとんど動くということはなく、こっちが興味を示しているのはしかし分かるらしくて時折視線を向けて何か物言いだけに見つめるのだが言葉を発することはなく、何か問い掛けてもだから答えることもなく、察してくれとでも言わぬげな眼差しを向けるのみなのが子供ながら胸に迫るものを感じさせ、以来面と向かって眺めることもなく挨拶程度の目配せで済ませ、「今もいるんだろうな」と懐かしげに田尻は呟く。それからはじまって時と場所を選ばず眼にするから子供ながらに不思議で仕方なく、アレは何なのかと親に訊きもしたのだが親はただの虚言癖と思ってか自分があらぬことを口走るとその都度叱るだけで何ひとつ真に受けてはもらえず、親との確執はだからもうその当時からあってそれが離婚の原因とは思わないが少なからず影響はあるだろうと思えば申し訳なく、その霊視が自分あるいは周囲の他者に与える影響を考慮すれば見えぬにこしたことはないのかと見ない努力をどれだけ重ねてきたかしれぬが、こっちの都合など構うことなく事あるごとに霊は現れ出るし下手すると話し掛けられたりもして一時期ひどく落ち込んだりもしたが、見えるものは仕方ないと開き直るといくらか展望が開けてそれならいっそ存分に見てやろうと思い立ち、露骨な覗き宛(さなが)ら相手が怯むほどにも眺め続けて一見巧いこといったかに思えたが所詮霊は霊で直視すべきものではないらしく、「もしかして取り殺されそうになったとか?」と異常な興味を示して友梨が口を挟めば「ああそんなこともあったけな」と感慨深げに田尻は言い、その辺のところを詳しく聞かせてとのさらなる問いに聞かないほうがいいと具体的なことには触れず、とにかく「いろいろあってね」霊なるものの恐ろしさを知るに及んで不安や恐怖に囚われ、そんな状態が「五年くらい続いたかな」と田尻は指折り数えて「いや六年か」と訂正し、その間対処方法はないものかと考え続けていくつか試みもするがどれも失敗に終わり、所謂お経だの護符だのいう一般に広く膾炙しているような除霊のほとんどが「っていうか全部だね」役に立たぬ代物と知り、少なくとも自分にとってはそうだと田尻は断言する。そんなときに限って押し寄せるようにやってきて悩まされ続け、退治ることはできないし穏便に帰ってもらうこともできないから避けられぬ事態としての死をも覚悟していたというが、それならなぜ医者に懸らなかったのか「心理療法とかカウンセリングとかあるじゃん」と友梨が訊けば、確かにそれも考えないではなかったが医者ほど信用できぬものはないし外科とか内科とかならまだしも精神科医など体のいい洗脳屋ではないかと言い、それを言うなら宗教のほうが余っぽど洗脳だとその矛盾を紀子に指摘されて嘘はつけぬと諦めたように「っていうか、正直言うと怖いんだ医者が」と田尻は打ち明け、医者にはだから行けなかったしそれ以前にこのこと自体を病気とは認識していなかったからほとんど思惟の埒外だったらしく、とはいえそれとの戦いを孤独に戦い抜くだけの力が自分にあるとも思えぬから死より他何も見出せず、それでも自殺しなかったのが不思議なくらいで錯乱しなかったのも今から思えば奇蹟という他なく、紀子には半透明の恵美の霊ひとりしか見えないがたったひとりでさえその衝撃は凄まじいものがあったのだから数知れぬしかも人に徒為す霊との遭遇は想像を絶し、自分だったらひとたまりもなく錯乱するにちがいないと紀子は思い、なぜそのように余命を保っていられるのかと端的に問えば、それが自分にもよく分からぬのだと田尻は首を傾げる。あるいはメシア=天皇が恵美=マリアがその解答を与えてくれるかもしれぬとの期待がなくもないが今それは置くとして、錯乱もせず死にもしなかったのはふとしたことから回避策を見出し得たからで、抑もなぜそのような展開になったのか自分でもよく記憶していないのだが霊の饗宴の真っ最中に気づかぬうちペニスを扱いていて、勃起したから扱いたのか扱いたから勃起したのかだから記憶になく、こんなときに何をしているのか遂に錯乱したかと一方で思いつつやりはじめてしまえば途中でやめることもできず、乱舞する霊を前にアダルトビデオを観るでもなくエロ本を観るでもなく淫らな妄想を浮かべるでもなくただ無心にペニスを扱いたのはそれが初めてで、それでも萎えることなく絶頂を迎えてティッシュには受けないで精液を飛ぶに任せ、ちょうどその辺りと友梨の尻の下を指差しながら田尻は言い、瞬間横っ跳びに身をのけて倒れ込むように紀子に凭れ掛かると「もう変なこと言わないでよ」と友梨が詰っても薄く笑ったきりで詫びもせず田尻は語を継ぎ、射精に至ってから霊の存在を思い出すがそれはすでになく、静まり返った室内が却って不気味なほどで、次の襲来に備えていたがその日はそれで終いで珍しいこともあると安眠したのを覚えているが、そのようなことを幾度かくり返して性的昂奮が霊それ自体を撃退するというのではないがその霊感を著しく低下させることに気づき、その性的昂奮が強ければ強いほど霊は稀薄になって絶頂に達すると確実に消え去ることもその効果が事後数時間持続することも分かり、根本的解決とは言えないがそれより他に回避手段が見出せぬ限り自分は常に性的に昂奮状態になければならず、常にペニスを勃起させていなければならないと田尻は言い、そのような予感のあるときにはだから必ず女性と一緒ならセックスするしひとりなら自慰を行って未然に霊との接触を防ぐということをしてきたと締め括る。

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