友方=Hの垂れ流し ホーム

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定例の飲み会は中止してとりあえずタクシーで自宅マンションの三〇二号室まで送り届けるがひとりおいて帰るに忍びないとベッドに寝かせた恵美の枕元に紀子は座してその様子を窺い事情を聞くが、今ひとつ要領を得ず「で、なんか入ってんの?」と訊くと「うん、そんな感じ」と答えるが確認していないためハッキリしたことは分からないらしく、その間も恵美は微かだが艶めかしい喘ぎを洩らし続け、そのように快楽に喘いでいるのを傍でただ見ていると何か馬鹿馬鹿しく思えてくるしからかわれているようにも思えて仕方がないが、ひどく困っていることは分かるので放ってもおけず、横になっていればしかし常と変わりないし喘ぎに身悶えることもないため「ホントにだいじょぶ?」と気遣いつつも「だいじょぶ」との恵美の答えに押されて紀子は帰宅し、その穴を埋めようとするように「じっとしてれば何てことないんだけどな」とひとり恵美は呟き、眼を閉じてゆっくりと深呼吸しながらともすると浮上する淫猥なイメージを撃退せんと小波ひとつない水上に浮かび漂う自身の姿をイメージする。


逡巡ののち思い切って「ねえ、ここにさあ、なんか入れた?」と恵美は訊いてみるが「あんがっえ?」と言いつつ恵美の股ぐらにピッタリと顔面を密着させて持ち前の長い舌で奥の奥まで探るようにねぶるのをやめない功次に「入れたでしょ」とさらに突っ込んで訊くと「入えておひいお?」と見当外れなことを言うので、功次ではないのかと「うん」と応じるとペニスとも見紛うその長い舌をスルスルと引き抜いた功次は半身を擡げて一瞬嘗めるように恵美の裸身を眺めてからその顔に焦点を合わせ、本物のペニスを宛って眼顔で合図しつつゆっくりと差し入れ、恵美を見つめたまま絶えずその反応を確かめながら抜き刺ししはじめ、とすると徳雄先生ということになるが、徳雄先生も「そういうの趣味なんだ」とはぐらかすように言って長い愛撫をやめず、追及の手はだからそこで閉ざされてしまい、いや、もう一歩踏み込めばその先の展開が期待できるかもしれないと愛撫を受けつつ恵美は虚ろに思うのだが、その一歩が恵美にはどうしても踏みだせず、確かな回答はだから得られてはいないので疑問の氷解することもなく、その熱く響いて恵美を疼かせる疑問と功次との二回徳雄先生との一回の計三回のセックスによる極度の疲労とを交々抱えて恵美は自宅マンション三〇二号室に帰り、待つ者のない暗く寂しい部屋の蛍光灯スイッチを探り点けると一層寂寥が身に沁みて全身に浸透し、その部屋の中央蛍光灯の真下にしばらく茫と立ち尽すが、すぐに疼きが込み上げてきてその場に恵美は頽れる。

どちらかが嘘をついているとしても疑いだせばきりがないし二人を疑いの眼で見ることが恵美は何より心苦しく、何か脅迫のネタにでもするという目的とすれば話は別だが、二人が恵美を脅迫する理由はないはずだから第三者の存在を想定せねばならず、つまり恵美の見知らぬ他人が恵美の知らぬ間に恵美の膣内奥深くに何物かを仕込んだということになり、瞬間恵美はその情景を脳裏に投射して産科医でもない見知らぬ他人に足を全開に広げている自身のあられもない姿をありありと見てしまい、さらに夢に見た見知らぬ男とのセックスを思い出して背筋が凍り言い知れぬ恐怖に捉えられる。その恐怖もしかし長くは続かず一瞬の旋風程度で治まってしまうのは、それが最悪の場合で現実的にまずあり得ないしそう考えている間も膣内の奥の奥の疼きが持続しているためマイナス思考に陥る余地を恵美に与えないからで、ストーキングされる謂われなどないしストーカーの心当たりも恵美にはまるでないが仮に相手が特定されたところで犯罪的ということに変わりはないので恐怖は解消し得ず、気持ちいいからいいのだとの快楽主義に屈服する形で胡麻化してそれ以上追及するのは止そうと恵美は全身の力を抜いてそのセックスのあとの余韻のようなしかし果てのない疼きに浸るのだった

誰もいないアトリエで深夜徳雄先生と会うのは二ヶ月に一度ほどで、密会というほどしかし艶めかしいものではないのでセックスに至ることもなく、恵美にとっても徳雄先生にとってもアトリエは何か神聖な場所でここではムラムラと慾情することがないから不思議で、徳雄先生の入れてくれた濃いめのコーヒーを飲みながら無駄話をするだけに終わることもあるし生徒の描き掛けのデッサンをイーゼルに掛けてその前に並んで腰掛けて批評などしつつ昔話に耽ることもあるし暇潰し手持ち無沙汰に軽くデッサンしたりすることもあるしと、そういう場所としてのみアトリエが機能していたからかどうかは恵美にも分からないがセックスの具にはなりにくく、アトリエに行けばだからこの疼きも少しは和らぐのではと恵美は単純に思うがこれからまた出掛ける気力はなく、明日行こうと決めてその可能性に縋るように眠りに就いたその約六時間後、目覚ましの音ピピピに反応して勢ピピピいよく起きあがった恵美は目覚ましのおいてあるテーピピピブル向こうの壁面まで膝ピピピピ行し、左掌で叩くように目覚まし上部のスイッピピピピピチを押しピッて音をとめるとそのままそこに横座りになって再度眠りへと後退するかに茫となるが、ふとその一連の動作に何ら障碍のなかったことに気づいて「あれ?」と呟き、キッチリと閉じられた遮光カーテンによって外から差し込む直射光はないはずだし僅かな明かりをさえ灯して寝る習慣のない恵美のこの部屋にこの時間発光しているものは何ひとつないはずなのだが、間接照明でも点けたように室内は薄明るく、その光源を辿ると恵美の這い出したベッドが淡い光を発していて、覚醒直後で警戒心が弛んでいるためか臆することなく恵美はその淡い光に躄り寄っていく。

そこにそれはあったのだが、とくに驚くことがないのも眠気のせいで夢の延長のような気がするからで、いやこれは夢だと恵美は短絡してとにかく眼を醒まそうと立ち上がってカーテンを引き開けて外光を入れ、まずは状況確認からはじめようと自室を一渡り眺め廻して不審な点とくに侵入者の痕跡はないかと探すが、整頓をあまりしない恵美の部屋は独身男性の足の踏み場もないゴミ溜めのような部屋ほどではないものの乱雑に散らかっているため侵入者の痕跡を見分けることは不可能だし、十日前に確認されている異物感とこれとを直接的に結びつける物的証拠は何ひとつないが、いやこれ自身がその際たるものに違いないし異物感が解消していることから見てもそう考えるのが普通で、そうとすれば埋め込まれたのはそれ以前ということになり侵入者の痕跡を見分けることは最早不可能だと恵美は結論し、まずはしかし異物感の解消を何より喜ぶべきで、あの退廃的且つ刹那的な果てのない快楽に未練がないとは言えないが四六時中膣内を刺戟されることがなくなったことに恵美は安堵の溜め息を吐く。恵美の中から出てきたというより恵美が産み落としたそれは鶏卵大の卵状の物体だったが、形状がほぼ球形なので鶏卵と異なることは瞭然で、ほんのりと黄色味掛かった白色の所謂卵色をそれはしていてやはり幾分発光しているように見えるが光線の加減かもしれないと恵美はその卵状の物体を掌に乗せて光の当たり具合をあれこれ加減しつつ眺め廻してみたところ、やはりごく僅かだがそれは自ら発光しているようで、しかも卵殻が発光しているのではなく卵殻の中のものが発光していてその光が卵殻を透かしているらしいと恵美は観察し、そこまでがしかし恵美の観察の限界で、その卵状の物体についてそれ以上のことは何ひとつ分からない。

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