友方=Hの垂れ流し ホーム

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七段

二人の足並みがぴったりと寸分の狂いもなく揃い、息づかいも一つになってそれが何より嬉しくてさらに近づき寄り添って鼓動も脈拍も意識の有りようさえもとにかくすべてが何もかもが一つになっているのを全身で感じとり、階段さえもそれを祝福讚嘆しているかのように踏板を軽快にギイギイと軋ませていつまでも鳴りやまず、それが二人をさらにも歓喜させ昂揚させ興奮させてこれ以上はないというほどに何もかもを一体にし、つまり自他を隔てている存在の境界が消えて何もかもが解け合い交ざり合ってまさに一心同体と言ってよく、二人を引き離すことなど誰にもできないできはしないと思い、そう思うだけで身体は火のように火照って息づかいも荒く身も砕けんばかりに疼いて仕方がなく、前を行く晴伸も私と同じ思いなのはその細腰のもだえ具合ですぐにわかり、わかると尚さら下から突き上げるような疼きに襲われてどうにもならず、今すぐにでも眼の前を行く晴伸に飛びつきたい衝動に駆られるけれどつぎの踊り場はまだ見えないし階段上ではあまりに危険すぎるからとの約束もあるので、というのも前に一度階段の途中で催してくねる晴伸の細腰を前にしてどうしても我慢ができずに武者振りついて股の間から手を差し入れたことがあったのだけれど足元が不安定なものだから踏板を踏みはずして危うく転がり落ちそうになって二人青ざめ絶句したということがあって、それ以来階段での猥りがわしい行為は絶対禁止という堅い約束を交したので我慢するほかないのだけれど、それでも手を伸ばせば触れられるほど間近にある晴伸のしなやかな手の動き足の動き腰の動きを眼前にしながらそれに触れることさえできないのは地獄の責め苦にもひとしく、いやそれ以上の苦痛だと晴伸のその細くしなやかで艶かしい細腰を眺めながら垂涎し、タブーであるがゆえにそれを犯したいという欲求はいや増しに増して眼前にゆらつく晴伸の股間に口づけたいという思いは抑えがたく、さらには階段のえも言われぬ軋みも加味されてその二つのこの上ない愉楽に両脇から突きあげられて気も狂わんばかりに身もだえしつつもあえぎあえぎようやく踊り場まで辿りついたので、すぐ部屋へあがって中の様子など確認する余裕もなく押入れをあけて蒲団をだして敷きのべて無造作に服を脱ぎ捨て投げ捨てて潜り込んでこれが最期かと思うほどの勢いで抱き合い絡みつきまぐわったけれど、階段を上っているときも確かに一体だと感じはするし体が疼きもするのだけれど、やはり実際にまぐわっているときの一体感には遥かにおよばず、その皮膚でその粘膜で晴伸を包みこみ晴伸に包みこまれる快感はたとえようもなく、すぐに意識が遠のいてまるで夢の中にいるような気になって、その夢の中でもやはり晴伸を包みこみ晴伸に包みこまれて果てしない陶酔に深く深く深く浸りつづけてそのうち本当に失神してしまうのだけれど、それというのも晴伸の身体がまるで私のために創られたといってもいいほど、いいえ私はそうだと確信していてそれは晴伸とまぐわいにまぐわい尽した結果見出した経験に裏打ちされたものなので揺るぎなく、晴伸の身体が私の身体の窪みという窪みや出っ張りという出っ張りにぴったりと隙間もなく嵌まりこんでしまい、だから一度嵌まるとなかなか離れなくて一度など前日の夕方から翌日の明け方ごろまで嵌まっていたこともあり、といって痙攣を起こして一晩無為に同衾していたというわけではなくて晴伸の腰も私の腰も自在に動いてやまなかったし、というよりそれ自身が強固な意思欲望を持っているかのように一晩うごめきつづけていたのであり、そのように二人が離れている時間よりつながっている時間のほうが長いのではと思うほどに互いの身体を貪り合っていて、いまでこそ私が晴伸の背中を細腰を見ながら晴伸のあとにつき従っているけれど、昔は晴伸のほうが私のあとをちょこまかとついて回っていたもので、あのころの可愛らしい無垢な天使の晴伸を思い浮かべるだけで粘液の滲出量も発熱量も倍増するけれど、いま私の上に乗って存分に腰を使っているのがあの無垢な天使の晴伸なのか全体にスラリとした細身のなよやかな身体つきだけれどその中に充分に男の逞しさ野蛮さをも併せもっている晴伸なのかその一物で私を刺し貫きその手で私の両の乳房を揉みしだきその舌で私の体を舐りつくしているこの晴伸なのか判然としなくなり、見るたびにそれは無垢な天使の晴伸にもなり逞しくも野蛮な晴伸にもなって私を惑わせ狂わせるけれど、それはかえって私の気を昂らせ上りつめさせてくれもするので私はただこの変容する晴伸に身を委ねているだけでよく、眼前をよぎる想い出のあれこれを手にとり眺めて無垢な天使の晴伸を思い、その無垢な天使の晴伸は私のあとにつき従い私の手足のようになっていろいろと私の要求にいやな顔一つせず応えてくれ、それを可愛いと思い愛しいと思ってそのころからすでにいまと変わらない思いだったし周りの大人たちもそれを捻じくれ歪んだ厭らしい眼で見ることはなくてむしろ微笑ましげに眺めていたのだけれど、いつからか訝しげな視線に変じていて何か不潔なもの不浄なものをでもそれは見る眼つきになっていて、どこにいてもどこからかそのような視線が私たち二人を捉えているのを感じ、それに耐えられずに家にひっそりと籠っていれば親までがそんな眼で私たちを見はじめて次第に疎んじ遠ざけるようになり、その絡みつくような粘っこい視線を魚のような生臭い眼を死んだような眼を腐れきった澱んだ眼を避けるために表面は彼らの望むように振る舞い行動し、でもそのお陰といっては可笑しいけれど思いは一層募り膨れあがり、その意味では私たちを観察監視しつづけた人たちにいくらかは感謝しなければならないかもしれないけれど、でもなぜそんな眼で見られるのかわからなかったしいまもって理解しがたく、そもそもなぜそれが世間一般で暗黙に禁止されているのかなど誰も明確な答えを示すことができないのに、つまり虚妄の禁忌といってよく、それに従う理由などまったくないはずなのになぜそれほどまでにこだわり忌みきらって何か不気味な化け物でも見るような、それでいてどこか好色な厭らしい出歯亀的な眼つきを内包してもいる矛盾した二局面を同時に表している気色の悪い虫酸の走るそれこそ私たちなどよりよほど非人間的な眼で見るのかがわからず、最も身近な分身ともいえる存在であればこそ最も愛情を感じて然るべきだし、私にいわせればそれを抑圧し禁止し罪悪視するほうがよほど捻くれゆがみ倒錯していると思え、私はそれを抑圧もしなければ禁止もしないし、ましてや罪悪だなどと少しも思ってはおらず、むしろこれこそ人のあるべき本来の麗しくも美しい姿だと讚嘆してやまず、私も晴伸も深性の真正の神聖の愛を愛し合っていて倒錯だとは感じていない、断じて倒錯などではありえないと思いきり腰を突きあげ突き回してその愉楽陶酔に浸るのだった。

そもそも晴伸との記念すべき最初のまぐわいは、私が誘ったのかそれとも晴伸が誘ったのかいまとなっては判然とせず、私のほうが若干誘導したきらいがなくもないけれど実際的にみればどちらが誘ったともいえず、二つの磁石のように互いに引き寄せられたとでもいうしかなく、いやそんなことはどうでもよくて、二人のそのまぐわいがただひたすら甘美に尽きるものだったといえばそれで足りるけれど、その晴伸との記念すべき最初のまぐわいの場所はハッキリしていて、両親とも出かけたおりのひっそりとした家の二階の南向きのよく陽のあたる当時私の使用していた六畳間の夕方近いけれどまだ日の沈まない頃合いで、窓ぎわにその日干したばかりのふかふかのベッドがあったにも拘らずなぜかそれは使わず、そのベッドの側面を背もたれがわりにして閑談に耽るうち何となく身体が触れ合い何となく抱き合ったのが切っかけといえば切っかけで、あとは済しくずしに一気に最後まで駆けのぼってしまって歓喜のうちに晴伸の大量の精子を一滴たりとも漏らすまいと受け入れていて、その放心している聡美の至福に満ちたようでいて憂いに沈んだようでもある私の讃美してやまないその顔をなかば私も放心の体で息荒く眺めていたが、すぐに中に放出してしまったことに気づいてうろたえ謝ると、一瞬聡美は何を言っているのか分からないというようなキョトンとした愛らしい眼つきで私を見つめるがすぐその意味を理解して「謝ることない、それが自然なんだから」と笑顔で言って股間の一物とともにだらしなくいじけて項垂れている私を抱き抱えて慰めてくれ、私はその聡美の胸の間に顔をうずめて嬉しいのか悲しいのか分からないが泣いたのだったが、双子とは言え一卵性ではなく二卵性なのでそっくりと言えるほど似てはいないものの姉弟なので似ていると言えば似ていて、そう言えば幼い頃はしばしば間違えられたりもし、子供心にもそれをよく心得ていて服を取り替えて悪戯などした記憶もあり、二卵性双生児にしてはよく似ているほうだったがそれも小学校に上がるまでのことで、少しずつその差異は大きくなって第二次性徴のはじまる頃には性差が明瞭に現れて間違えられることもなくなり、と同時にそれまでの仲のいい姉弟という人々を和ませる微笑ましげなイメージが仲の良すぎる姉弟となりいかがわしい間柄の姉弟となり淫らな汚らわしい姉弟となって周囲の視線が何か監視でもするように鋭く厳しくなり、事あるごとに噂に上るようになれば狭い町のことで噂はすぐに広まって瞬く間に親の耳に入ったのも頷けるのだが急に態度が豹変し、あからさまに難詰はできないらしく成り行きを静観してはいるもののそのあまりに他所他所しい他人行儀な接し振りには愕然とし、これまで唯一の安全地帯と全幅の信頼を寄せていた二親の庇護をすら失ったも同然で、常に誰かに監視され尾行されてその一挙手一投足までも眼を放すまいと見張られているという被害妄想に取りつかれて表立って二人並んで歩くことさえできなくなり、手を繋ぐことも腕を組むこともできず、ましてや抱き合うというような恋人同士の振る舞いなどできるものではなく、家に籠れば籠ったで中で何をしているのか、姉弟であらぬことをしているのではないかとやはり噂が流れ飛び交い、つまり何をしても何をしなくても二人のことは話題になり好奇の的なのであり、そのような周囲の状況に対して聡美は憤りを感じているらしく、他人は信用できない、いや両親でさえ信用できない、信じられるのは私だけだと愛撫の手を休めずに言い、私も同感だと愛撫の手を休めずに言うと「嬉しい」と言って強く私を抱き締め、周囲が総て敵という全く孤立した状況のなかでそれだけが唯一の慰めだとでもいうようにいつまでも愛撫しつづけ、私もそれに答えようと愛撫を返すのだった

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