「ご用の向きは何でしょう?」
「えっあのっご用とか急にえと、言われても、困ります」
「ですけどあなたがお呼びになったのじゃありませんか、ですからわたくしこうして遙々やって来たのですよ」
「っていうか、別に呼んではいないと思いますけど」
「何を仰有います、ほらそこの壺ありますでしょう、それをこう丹念にさすってらしたじゃないですか。そうしてわたくしをお呼びになったじゃないですか、違いますか?」
「あの、でも、それは冗談で、ふざけてて」
「冷やかしで呼んだのですか?」
「冷やかしとかそういうわけじゃ」
「とにかく呼ばれた以上ご用の向きを伺わなくてはわたくし帰るに帰れません」
「いや、でも、ご用とか言われても別に」
「最初は誰でもそう仰有いますが、考えればいろいろあるものです。時間制限は設けられておりませんのでゆっくり考えて頂いて構いません」
「あの、えと、そうですか、じゃあ、あなたを、いやあなたと、その、つまり」
「はい何でしょう?」
「あの、お名前は何と?」
「わたくしですか? わたくしは泣きぼくろの仙女と申します」
「泣きぼくろの?」
「はい、仙女と申します」
「じゃあ改めまして、泣きぼくろの仙女さん、えと、えとその前に何か、禁止要項みたいなのってあります?」
「はい御座います。願いを規定数より増加せよとのご要望には応えられません」
「他には?」
「御座いません」
「それだけですか?」
「はい。詳細はお手数ですがこの手引書をご覧下さい」
「あ、すいません。え? 何コレ?」
「何でしょう何かおかしなところでも?」
「え、だってコレ、監修ハクション大魔王って?」
「大魔王様をご存知なんですか?」
「ご存知も何もテレビで、ええ? でもだって」
「わたくしもお噂には聞いております。今はもう引退なさっておられますが、何でも物凄い魔法の使い手でいらっしゃったとか。お若い頃はそうでもなかったらしいのですが、その後のご活躍は目覚ましいものと聞いております。その破天荒な魔法は誰にも真似のできるものではなく、その数々の逸話は最早伝説となっております。なかでもカーン伯爵とブル侯爵との死闘に於けるご活躍は知らぬ者もないほどです」
「カーン伯爵?」
「はい、ご存知ありませんか?」
「カンちゃんなら知ってるけど」
「カーン伯爵です」
「はあ」
「御息女のアクビ様には一度お会いしたことが御座います。それはもうお美しい方でわたくしなどその足元にも及びません」
「そ、そうなんですか?」
「ところでご用の向きはお決まりでしょうか?」
「ああ、はい、えと、そうですね、はい」
「何でしょう」
「あの、泣きぼくろの仙女さん、あの、あの、あのボクボク、ボクと」