前回までのあらすじ

膣内の異物感に身悶えた恵美は動くたびに快感を齎すその疼きが治まると自ら発光する卵を産み落とした。功次、徳雄先生との関係から三人の遺伝子が絡み合ってできたと恵美は思い、安直だと親友の紀子に呆れられるがこれは真のメシアに違いないと確信する。その卵から孵ったのは体長十センチほどのヒトに似た胎児だった。「知恵美」と命名すると、知恵美は自ら天皇と豪語して現天皇の廃位抹殺を宣言し、あまりの飛躍に恵美は絶句する。折しも徳雄先生と功次との三角関係が露見して二人ともに恵美は愛想を尽かされ、知恵美への依存をさらにも深めていく。

程なく卵を崇拝対象とし、それから孵った子が真のメシアだとする宗教団体『神聖卵教会』とのコミットを恵美は紀子に奨められ、ともに教団本部に訪れる。幹部の八木、教祖の日下に知恵美を見せると一般信者とは別扱いとの待遇を得る。教団主催のセミナーで知恵美をメシアの顕現として公表すると、その淡い光を浴びて皆驚き、満場一致で知恵美は『神聖卵教会』のメシアと認定される。

そんななか知恵美が縮小しはじめ、その看病に追われて恵美も紀子も憔悴し、ついには恵美が倒れ、死んでしまう。教団幹部の八木はこの機に知恵美の保護を訴えるが、紀子は頑なに拒否して自ら知恵美を引き取った。

恵美の不在によってその支柱の一本が崩れ去ったように自己がグラつき、加えて河井課長のセクハラ、治まらぬ知恵美の縮小と重なってその限界の近いのを紀子は予期していた。それでも教団のセミナーに出席したのは知恵美が望んだからだが、請われるまま出席するうち徐々に紀子は教団に染まっていく。

ふと徳雄先生の勤務するアトリエへ紀子は赴き、そのつもりはないながら関係を持ってしまう。巧々と恵美の後釜に納まってしまった自身の狡さを嫌悪する一方でそれを必然とも紀子は思う。

その後知恵美の縮小は止まるが蛹のように固い殻に覆われて動かなくなり、教団でも問題になって連日協議する。八木に送られて自宅へ戻った紀子は酒を飲み、酔って知恵美が羽の生えた姿に変態するのを幻視する。目醒めると知恵美の姿はなく、酔い潰れて眠りこけている自分に愛想を尽かして飛び去ってしまったのか、あるいは光となって昇天したのかと紀子は嘆くが、知恵美は無事に見つかる。すでに変態を遂げていたが、その姿に変化らしい変化はなかった。

知恵美の提言で『神聖卵教会』が『神聖チエミ教』へと改称されると、知恵美派と名乗る過激な連中が台頭してきて教祖日下以下、紀子を含めた幹部一同は不安を募らせる。その不安のなか街で紀子は信者の吉田に呼び止められ、孫の病気について知恵美に救いを求められる。知恵美はそれを軽く請け合い、紀子が懸念を示すと「それくらいできなくてテンノウとは言えないよ」と自信たっぷりに言う。

不安から紀子は徳雄先生とのセックスに逃避するが、知恵美を受け止められなかった徳雄先生もまた思い悩み、恵美の不在を互いに補うようにしてふたりは快楽に浸る。そしてセックスより以上の疲労を抱えて紀子は帰宅すると、知恵美を神棚に据えて知恵美にというよりは恵美への手向けの意味で拝み、その恵美との二人三脚のように徳雄先生とも連携できればと願うのだった。

「私も欲しいな灼かな霊験」期待しないで待ってると紀子が言えば「信用ないな」と知恵美はぼやき、「信用してるよ陛下」と紀子が微笑み掛けると「怪しいな」と皮肉にカカと笑う。