「そいじゃ、行ってくるよ」
「ほんとに物好きだねえ、何もあんたがさやんなくたっていいようなもんだのにさ」
「そうもいかないよ、あそこが塞がっちまったらみんな通れなくなっちまうじゃないか」
「だけどほら、兵隊さんらがさ、片づけてくれるって話だろ。下手なことしてとばっちり食ったりなんかしたらさ、困るよ。そうでなくてもうちは男手がないんだし」
「週一じゃ追っつかねんだよ、兵隊さん待ってるあいだに埋もれっちまうよ」
「でもねえ、ほら先だっても軍からなにかお触れがあったじゃないか。そのあとだよ、田代さんいなくなったの。奥さん何も言わないけど連行されたって噂だよ」
「ちがうちがう、あれはまた、別の話で、たしか銃刀法か何かの件で」
「でも」
「だいじょうぶさ、悪いことしてるわけじゃないんだから」
「…」
「そいじゃ、行ってくるよ。徳さん来たら待っててもらって」
「気をつけてくださいよ」
「ああ分かってる」
「いってらっしゃい」