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雑記
miscellaneous notes
送る。
2005年11月26日
長らく描いていた冬コミ用の漫画がようやっと終わった。十六枚と枚数は少ないながら時間配分が分からなくて結構焦ったりもした。下描きまではハイペースだったがペン入れに入った途端にペースダウンして、一次はどうなることかと思ったが、どうにか間に合った。あとは送れば仕舞いと封筒を用意したものの、そのまま入れたのでは容易く折れてしまいそうで、何だか頼りない。何か手頃な厚紙等ないかと探したら紙パレット(油彩やアクリル絵の具などに使う、日捲りのカレンダーみたいにその都度剥がして使うパレット)使用後の台紙が取ってあり、大きさも手頃だったので原稿サイズにカットして入れることにした。ほかにアクリル板もあって、強度的にはそのほうが安心なのだが、封筒に入らぬサイズで切るのが手間だからそれは止した。で、その台紙を二枚用意して原稿をサンドし、ビニール袋に入れて口をテープで塞いだ。これで濡れても大丈夫だとそれを持って郵便局へ向かったのだった。
因みに台紙一枚だと500g以内で390円なのだが、二枚にすると500gを越えてしまって580円になる。とはいえ、ここでケチって折れたり折られたりしたら元も子もないので二枚で挟むことにした。
郵便局へ行くと、辺りは妙に閑散と静まり返って人影もなく、訝りつつも入口のほうへ向かうが中へは入れなかった。シャッターが下りていたのだ。その日はちょう23日で、祭日で休みだということを完全に失念していたのだ。ポストに投函すればいいようなものだが、窓口へ出そうと思っていたため切手を貼っておらず、結局その日は出せずにしまった。
翌日出向いたが、やはりシャッターは下りていて、中へは入れないのだった。そんなはずはないとしばらくウロウロしていたら不意にシャッターが上がって中から手招きする人がある。制服を着ているから局員らしいが、身なりはひどくだらしなく、袖口や襟元に垢染みた生活感を漂わせ、全体薄汚れている。薄暗い屋内に立つ男の表情は読み取れず、一歩踏み込んで覗き込もうとするとその間合いを察してか局員はスイと身を翻し、窓口の向こう側へ回って億劫そうに席に着いてこちらをじっと見据える。封筒を差しだすと丁寧に受け取り、サイズを測り重量を量り、何やら計算している。その手際の良さに張り詰めていたものが解れてゆき、柔らかい息がひとつふたつ漏れる。局員は低い小さな咳払いをひとつすると、42,000円になりますと言う。
解れたとみえた空気がまた凝り固まり、首傾げつつ局員を窺うと42,000円になりますと再度言う。その確信を込めた眼差しにはこちらをたじろがせる強さがあり、あるいは価格改定されたのでもあうかと考えるが42,000円とは法外な値で、どんな無法な改定がなされてもそんな値段になるはずがない。郵便でなくとも送る方法はあると封筒を取ろうとすると一旦受け付けたものは返せぬとその局員は言う。だからといって4万も払えるわけがなかろうと迫るとすでに荷は発送されたと奥を指差し、見ると沢山の荷を積んだトラックが鈴なりに走ってゆくのが窓越しに窺え、それでもまだ間に合うかもしれぬと窓口を乗り越えてトラックのほうへ向かおうとすると後頭部に衝撃が走り、惰性で二、三歩進みはしたものの痛みと眩暈でそれ以上進むことは叶わず、頭を抱えて踞るとともに視野が狭まり意識が遠退いてゆく。オレの原稿、返せ、オレの。何かそんなようなことを頻りに訴えていたようだが、鈍い痛みに呻く声にいつかそれは掻き消え、定まらぬ視界の隅のほう、濃緑の制服の足がこちらへ揺らめき向かってくるのを微かに認めるが、いつまで経っても近づく気配はなく、いやむしろ遠離りゆくようだとそんなこを思ううちに意識は途切れた。
原稿が無事に届いたか否か、それは知らない。